「『PB-1000・PB-1000C』って言うけれど、PB-1000って何?」とおっしゃる方の為に、PB-1000/Cについて説明したいと思います。
PB-1000/Cは昭和61年6月にカシオ計算機から発売された「ポケットコンピュータ」です。
ポケットコンピュータとは、関数電卓にプログラム機能(主にBASIC)が搭載されているもので、コンピュータの教育実習や電卓では困難な計算が
必要な業務などで使われてきました。ポケコンが初めて登場した頃は表示も16桁1行など狭かったりメモリも少なく、
搭載されているBASICも「PRT」(=PRINT)や「VAC」(=CLEAR)など独自のものを採用していました。
ポケットコンピュータを発売しているのは主にカシオとシャープで、年月が経つにつれて徐々にバージョンアップしていきました。
カシオでは上記の様な構成の「PB-100」と言うポケコンが好評だった為に、以後に発売される機種はPB-100の互換性を重視して
あまり大きな変更はありませんでした。しかし「PB-700」でグラフィック画面やマイクロソフト系BASICの導入等の大きな変更を施し、
さらに進化した「PB-1000/PB-1000C(以下PB-1000/C)」が生まれました。
PB-1000/CはJIS準拠のC61-BASICを搭載し、正式にマシン語をサポートしてアセンブラ搭載、192×32ドットのグラフィックは当時最大の
画面、タッチキー搭載で使いやすいスクリーンエディタ、メモリ最大40KB等・・・と、はっきり言って「小型のパソコン」と言っても過言ではない構成
でした。
現在では様々なモバイル系パソコンが登場していますが、PB-1000/C発売当時(1986年)はこういったコンピュータは少なかったと思います。
やっぱりモバイルの基本はポケットコンピュータだと思うのです。その中でもPB-1000/Cはパソコンを意識した様々な要素を取り入れており、
コンピュータの未来像を予感させるものでした。
いつでもどこでも電源オンですぐに使えるPB-1000/Cは、人に一番身近な真のパーソナルコンピュータを目指していたのかもしれません。
カシオは現在でもデスクトップパソコンは発売せずに「カシオペア」や「カシオペア・ファイバ」などの小型のコンピュータを発売し続けています。
いつでもどこでも使える身近なコンピュータにこだわって作り続けているのかもしれませんね。
BASIC機能 (BASIC Language) |
「PB」は「Pocket Basic」の略ですから、BASIC言語を基にしたシステム構成になっています。
PB-1000/Cで搭載されているBASICは「C61-BASIC」と言うものでJISに準拠したBASICになっていて、
よりパソコンのBASICに近いものとなりました。「MSX
BASIC」と比べると、いささか非力に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、
これはこれでなかなか使い易いBASICなんです。
PB-1000/CのBASICで独特な所と言えば、「GOSUB」命令のジャンプ先(サブルーチン)にファイルを指定出来ると言う所でしょうか。
つまり、よく使うサブルーチンをファイルにしておいて、複数のファイルから呼び出す事が出来ます。
計算機能 (CALclation mode) |
普通のパソコンでは考えられないのが、CALモードでしょう。簡単に言えば電卓機能です。
ただし普通の電卓と違い、カッコ等を含む複雑な計算式もちゃんと優先順位にしたがって計算してくれます。
元々、ポケットコンピュータは電卓の発展型な感じがあるので、こういった機能が搭載されているのは当然の事と言えますね。
CALモードと言っても大したものじゃなく、BASICで言うダイレクトモードでPRINT文が付いて実行されていると言った感じです。
メニュー機能 (File Management) |
PB-1000/Cでは、本体に複数のファイルを登録出来るようになっています。
本体に記録されたファイルをBASICコマンドで管理するのは大変至難の業です。
そこでPB-1000/Cでは、強力なメニュー機能を搭載しています。
このメニューで、ファイルの新規作成・削除・名前変更・各デバイス(補助記憶装置)へのセーブ・ロード、通信(送信・受信)等が行えます。
PB-1000/Cのファイルシステムで面白い所は、「操作は常にファイルに対して行なわれている」と言う事です。
例えば、BASICプログラムを作成している時にプログラムは決められたフリーエリアに収められるのではなく、ファイルに収められます。
ファイルをコピーする時は現在のファイルに対して外部記憶装置に「セーブ」する事で行います。RAMに対しても同様です。
上の画面は、ファイルのリネームとコピー(RAM内に)を行っている場面です。よって、PB-1000/CにはCOPY命令がありません。
私はCOPY命令によるファイルのコピーに慣れていたので、「既にセーブしてあるファイルを別な名前でまたセーブする」と言う行為は非常に
面白く感じました。
数式記憶機能 (Formula Memory) |
簡単に連続計算させたい時に、その都度プログラムを組むのは非常に面倒です。
PB-1000/Cに限らず、大部分のカシオのポケットコンピュータには数式を登録するだけで入力・計算してくれる「数式記憶機能」が
搭載されています。上の画面の様に変数を含んだ数式を[IN]キーで登録して[CALC]キーを押します。
PB-1000/Cは数式の計算に必要な変数の入力を要求してきます。値を入力するだけで計算結果を得られる便利な機能です。
スクリーンエディタ (Screen Editor) |
従来のパソコンのBASICでは、ユーザーに十分な開発環境が与えられていませんでした。
プログラムリストを表示させるLIST命令も画面が流れるだけで画面を戻す事が出来なかったり、
シーケンシャルファイル(テキストファイル)の内容を見る方法がなかったり今イチ使いづらいものでした。
PB-1000/Cでは、スクリーンエディタが搭載されています。
画面を上下にスクロールさせてプログラムリストを自由に見る事が出来たり、文字列の検索などが出来ます。
もちろん、シーケンシャルファイルも直接編集出来ます。エディタではBASICプログラムを編集している時と
シーケンシャルファイルを編集している時と殆ど操作に違いがありません。操作性が一貫しているのも使い易い証拠なのです。
上の画面は、行の修正・追加を行っている所です。
アセンブラ機能(HD61700 Assembler):PB-1000 only |
PB-1000になって、一番の進歩はなんと言ってもマシン語の正式サポートされて、アセンブラが内蔵されている事です!
このアセンブラは最低限の機能しかありませんが、他機種ではアセンブラのソフトを読み込んでからソースリストを読み込むと言う
二度手間を考えると、やはり「内蔵」は大きな強みと言えるでしょう。
マシン語プログラムを作成し、PB-1000の能力を最大限に発揮させましょう!
CASL機能(Virtual Computer 'COMET' Assembler):PB-1000C only |
PB-1000Cには、アセンブラが内蔵されていない代わりに情報処理技術者試験で使われている仮想コンピュータの
アセンブラ言語「CASL」が搭載されています。これを使って、練習問題をそのまま打ち込んでみて動作を確認出来るのです。
これは強い味方になります!(私もコレのおかげでかなり助かりました)
ただ、CASLは近年に大幅な仕様の変更が施されており、PB-1000CのCASLだけでは全てを対応出来なくなったのは残念です。
しかし、CASLの入門用としては使えるでしょう。
仮想スクリーン機能(Virtual Screen) |
PB-1000/Cは従来のポケットコンピュータよりも画面が広くなっています・・・とは言え、やはりパソコンに比べたら
画面が狭いと言う事を認めざるを得ません。そこで画面の狭さをカバーするために「仮想スクリーン」が搭載されています。
これは実際には4画面しかありませんが、画面がスクロールする事によって8画面分の編集が可能になっているのです。
かなり画面が広く感じる事が出来るでしょう。
PB-1000/Cがどんなコンピュータか、お分かり頂けたでしょうか?PB-1000/Cにはもっと沢山の機能が搭載されています。
これを読んで、1人でも「PB-1000/Cが欲しい」と思う方がいらっしゃれば幸いです。