1.はじめに |
CASIO教育用モデルであるVX-4は、191×32ドットのフルグラフィック表示可能なLCDや、
RS232Cポートの標準搭載、30Pin外部入出力端子によるI/O制御、BASIC/C言語のみならず、
隠し機能でマシン語の利用も可能など、非常に高機能なポケコンなのですが、
学校での利用モデルであるが故、標準搭載メモリが少ないのがネックです。
(標準メモリが8KBでしかもユーザが使えるフリーエリアが3.5KBしかありません)
メモリ容量の増設には、メモリ増設ポートにRP-33相当品を追加する方法がありますが、
ここでは内蔵メモリを32KBに換装してFX-870P相当のマシンにしてしまう方法を紹介します。
この方法だと、内蔵のメモリを32KBタイプに交換するだけなので費用も安く、かつRP-33相当の
増設メモリを作製するよりも工作が簡単です。(少々高度なハンダ付けは必要ですが)
この改造により、メモリ容量が増大するだけでなく、0000h〜0FFFhまでの4KBを
システム未使用領域(マシン語領域)として自由に使える様になります。
プログラムライブラリにある「jintori」「巨大戦艦1000C」はこの改造をしないと動作しません。
CASIOポケコンVX-4の内蔵メモリを32KB化してFX-870P相当に改造します。 (注意:この改造を行うと、メーカー保証は受けられなくなります。 またポケコンを壊してしまう場合もありますので、実施は自己責任でお願いします。) |
2.内蔵メモリ換装方法 |
内蔵メモリを増設するにあたって必要な道具です。
特に低ワットなセラミックはんだごてとハンダ吸い取りリボン、 精密ドライバは必須です。 換装するS-RAM(HM62256-LFP)は、通信販売等で入手可能です。 (500〜700円程度です) サンエレクトロにて入手しました。 |
まず、VX-4の裏ぶたを外し、単3電池/メモリ保護用電池(およびRP-33)を外します。
その後、中ぶた固定用のネジを外して取り外せるようにします。
ネジを外したら、中ぶたをLCD(液晶)と反対側の爪のある所をマイナスドライバーで押して取り外します。
(下の画像参照)中ぶた固定用の爪は6ヶ所あるので慎重に取り外してください。
中ぶたを外すと、MPU基板とLCD及びキーボード基板の2つに分かれます。
フィルムケーブルコネクタのロックを外してMPU基板と分離します。(下図参照)
次に、MPU基板カバー固定用のネジを外し、カバーを取り外します。
するとMPUが見えますので、基板固定ネジを取り外します。
圧電ブザーおよび電源配線を切らないように注意しながら、MPU基板を裏返しにします。
(電池ボックス側からマイナスドライバを差し込んで基板を浮かせておいてから、30Pコネクタ側から基板を押してずらすと、容易に裏返せます)
↑基板を裏返すと、中央にS-RAM(HM6264相当品/8KB)が見えます。
↓チップ脇のシルクに「HM6264」と書いてあるので、S-RAMだと判ります。
(3)S−RAMを載せ換える
ここからが、この工作の山場です。
搭載されているSRAM(HM62256相当品)を基板から取り外し、HM62256-LFPに載せ換えます。
以下の手順で慎重に行ってください。
1. | 基板上のS-RAM(HM6264)の足に付いているハンダを、ハンダ吸い取りリボンで吸い取ります。 |
2. | S-RAM(HM6264)の足を端から順に持ち上げて外します。 (細い針か精密ドライバ(マイナス)でS-RAM(HM6264)の足を軽く持ち上げるように力を加えておいて、 ハンダごてをSRAMの足に当てると、ハンダが熔け足が上がるので、そのまま跳ね上げればOKです。) |
3. | 全てのピンを跳ね上げ、S-RAMを外したらパターン上に残っているハンダを、ハンダ吸い取りリボンで除去します。 (できるだけきれいに除去しておくと、後の作業が楽です) |
4. | ICの取り付ける向きを間違えないように注意して、32KBタイプのS-RAM(HM62256-LFP相当品)をハンダ付けしていきます。 S-RAMピンはピッチが細かいので、基板上のパターンとICのピンがずれないよう、位置合わせは慎重に行ってください。 また、細かいハンダ付けなので、となりのピンにショートしないように注意してください。 (ショートした場合は、あわてずにハンダ吸い取りリボンで余分なハンダを除去すれば大丈夫です。) |
5. | S-RAMの取り付けが終了したら、基板上のランドPAD1/PAD2を変更します。 PAD1のハンダをハンダ吸い取りリボンで除去してOPENにします。 次にPAD2をハンダ付けしてショートさせます。 |
S-RAMを載せ換えたら、動作確認を行います。
1. | ハンダ付けの終わったMPU基板を裏返して、ケースに元通り納めます。 |
2. | MPU基板にLCD/キーボード基板のフィルムケーブルコネクタを2本ともセットします。 (コネクタにケーブルを差し込んでから、コネクタロックを元に戻します) |
3. | 単3電池を4本セットして、電源を入れます。 電源が入らない場合は、本体裏側のPスイッチを押してから、もう一度実施してください。 (本体裏のスライドスイッチをONにするのを忘れないようにして下さい) もし、それでも電源が入らない場合は、配線を間違えていると思われますので、すぐに電池を外してチェックしてください。 |
4. | 前面の「ALL RESET」を押して「RAM 32KB+0KB」と表示されればひとまず成功です。 表示が違う場合、PAD1/PAD2の改造およびSRAMハンダ付けを確認してください。 |
電源ONの状態でMPU基板の「PADK」とシルクのあるパターンを ピンセット等でショートすると、テストモードになります。 (SYSTEM* [EXE]を実行しても、テストモードに遷移できます) |
以下がテストモード画面です。
このモードで4番と5番のチェックを行って問題なければ、改造終了です。
(4を実行すると「<RAM CHACK>PACK 0KB」と表示され、エラーがなければテスト画面に戻ります)
もしエラーが発生した場合は、速やかに電池を外して、配線を確認してください。
テストが問題なければ、電池を抜き、分解したのと逆の手順で組み立てて下さい。
以上で作業は終了です。お疲れさまでした(笑
3.あとがき(VX-4のススメ?) |
「PB-1000/C Forever!」なのにVX-4/FX-870Pの記事ばかり投稿していてすみません。
クロスアセンブラ「HD61」を開発したときにVX-4を譲っていただいた関係で、そちらを使う機会が増えていると言うのもありますが、
実際に使うと非常に便利で最近ではVX-4の方がメインになっているかも知れません。
実はHD61を開発するまで、普通の用途では、関数電卓の方が便利で使いやすかったため、
ポケコンはほとんど使っていませんでした。(PB-1000も本棚に数年間放置されていた状態でした)
しかしVX-4を入手し、レベコンを作製して(HD61のデバッグ用に)持ち歩くようになってから、
その便利さ(自由にプログラムを入れ替え可能な点や、レベコン経由でパソコンと連携が取れる点)と
頑丈さに手放せなくなってしまい、今では会社で毎日使っています。(予備機まで入手してしまいました。笑)
本来ならPB-1000/Cの方が便利なため、そちらを持ち歩けると良いのですが、折り畳み式筐体は非常に弱く、
メニューキー等が接触不良をおこしたり、最悪の場合電源が入らなくなったりしてしまいます。
既にCASIOのPB-1000/Cに対するサポートも終了しているようで、自宅のPB-1000をキーの接触不良で修理に
出したところ、修理不能でそのまま戻ってきました。(何故かキーが動くようになって戻ってきたのは謎ですが)
#現在PB-1000は、自宅でそっと保管されています。
VX-4はPB-1000/Cの様な高機能なファイルメニューが使えないと言う最大の弱点(欠点?)がありますが、
非常に頑丈で、普段持ち歩いて酷使しても全く平気と言う見逃せない長所があります。
またVX-4のBASICは、グラフィック命令が無い以外はPB-1000とほぼ互換で、同じMPUを搭載しているため、
BIOSコール等を変更すればマシン語資産も活かすことができます。
#オークションで中古品が1000円〜3000円くらいで簡単に入手できるという点も見逃せません。(笑
#PB-1000/Cはオークションでも見かけたことがありませんが・・
現行機種(FX-890P/Z-1GR)がまだ普通に入手でき、しかも高機能なPDAが氾濫している現在、新たに
VX-4を購入するメリットがどのくらいあるかは判りません。
しかし、PB-1000/C、AI-1000を過去または現在持っていて、故障等で代わりの機種が欲しいと言う場合には、
ほぼ同じBASICとマシン語が使え、頑丈で入手が容易なVX-4は(少々操作性は劣りますが)とても魅力的な
選択肢だと思います。
これら山爺さん、JUNさん、私(あお)で紹介してきた記事が、VX-4/FX-870Pを所持している人だけではなく、
PB-1000/C、AI-1000を使っていた(いる)人も含めて、もう一度ポケコンを活用する手助けになれば幸いです。
参考文献:「ポケコンジャーナル(工学社)」1993/8号「VX−4をRAM増設」もお
氏
記事は、あお氏よりご寄稿して頂きました。ご協力誠にありがとうございました。