CASIOポケコン(AI-1000/FX-840P/841P/FX-870P/VX-3/VX-4/FX-890P/Z-1GR)用 RP-33互換増設メモリです。
|
1.はじめに |
VX-4やZ-1等、教育関係で利用されているポケコンは標準搭載のメモリが少なく、
(VX-4は標準8KB/FX-870P/Z-1GRは標準で32KB)、複数のプログラムを記憶させるのには向きません。
CASIO純正の増設メモリ(RP-33)は32KBの容量を持ち、VX-4を始め、多くのCASIOポケコンで
利用することができますが、値段も高く、さらに現在では入手が難しいものとなっています。
本記事は、標準状態では空きパターンとなっている増設メモリ用のポートに32KBのSRAMを
増設するための技術情報および、実際のSRAMカード作成手順を述べています。
2.増設メモリポートの説明 |
増設メモリ用のポートは、 ポケコン裏側のカバーを外すと見えます。 写真右はVX-4の裏側カバーを外したところです。 |
|
増設メモリポートは、 画像の右側にある金色の端子が並んだ所(写真右)です。 メモリを増設するには、ここにHM62256相当品を接続してしまえば 良いと言うことになります。 |
SRAM(HM62256-LFP)は、通信販売等で入手可能です。(500〜700円程度です)
私(あお)は秋葉原のサンエレクトロにて入手しました。
3.増設メモリポートピン配置 |
SRAM側(HM62256-LFP)のピン配置は以下のようになっています。
上記SRAMに対応する、ポケコン側増設メモリポートのピン配置図を示します。
FX-870P/VX-4と、AI-1000/FX-890P/Z-1GR系統で一部、レイアウトが違っていますが、
基本的なピン配置は、全く同一のものとなっています。(互換性があるので当たり前ですが・・)
図のピン番号(1〜32)の横に括弧内に併記してある信号名がHM62256側の対応するピンの名称となっています。
この図の通りにSRAMと増設端子とをジャンパ線で結線(ハンダ付け)してしまえば、無事、メモリが増設される事になります。
4.増設メモリカードの作成(By山爺さん) |
基本的には上記3章で述べた要領でSRAMと増設メモリポートを結線するだけなのですが、
非常に美しいSRAM増設カードを作成された方がいますので紹介いたします。
#正直言って、このレベルの自作は普通の人には難しいと思います(笑
以下、山爺さんより寄せられた増設メモリ制作記事です。
(注意:この記事は山爺さんからの投稿を、私(あお)が再編集したものです)
4−1.制作の動機 |
カシオのポケットコンピュータ「VX-4」のRAMは8KBで、ある程度のBASICなら充分ですが、
何本も入れると不足します。純正の増設メモリ「RP-33」はオークションでも見掛けません。
(シャープ製は良く見掛けるのですが・・。)
無いものは作るしかないと、VX-4本体を分解して内部RAMやROMの足と増設端子を調べました。
(詳細は3章を参照)
純正のRP-33は見たことがないので、回路が同じかは不明です。当方でVX−4とZ−1GRで
使えていることは確かですが、素人が設計したもので他の機種で使えるかは判りません。
4−2.フレキ制作 |
まずSRAMを載せるパターンを市販カメレオンフレキで自作しました。 アートワークはJW_CADで書いて、 レーザープロッタでトレーシングペーパーに鏡反転で打ち出し、 百均のホトスタンドのガラスで印字面と感光面を合わせ太陽光で露光しました。 (フレキは同時に12枚作成しています) |
|
1.27mmピッチの中間にラインが1本通っている所があり、 それなりに細密はんだ付けの技量が必要と思います。 最初は片面では無理かと思ったのですが、 無理では製作出来ないので増設端子の中間にパターンを通すのに パターンの形を工夫をしました。これで多少ずれても大丈夫です。 フレキの巾はVX−4のくぼみにぴったりにしてあり、 長さはZ字分(スポンジによる 圧着のための予備部)を長くしました。 端子側をくぼみの端に合わすと端子位置です。 装着時、S−RAMがフレキの下(本体側)に なります。 |
#実は上で紹介しているフレキパターンは、説明用に実物のパターンと同じ向きになっています。
#実際に焼き付けする場合は、下のように鏡反転したものを使います。
4−3.部品のハンダ付け |
フレキの制作が終わったら、部品をハンダ付けします。 S−RAMの半田付けは1.27mmピッチのランドの中間にラインが通りますので、 注意しないとパターンとショートします。 また、フレキに伸び縮みがあるようでRAMの足とずれが出ます。 |
||
フレキにフラックスを塗っておいて、 4隅の足を半田付けしたら他の足はパターンに 合わせて曲げ修正した方が安全です。 鏝で足とパターンを加熱しておいて糸半田は、 ちょん付けし半田がぬれ広がったら、おもむろに鏝を離します。 S-RAMの下に付いているのは チップ型パスコン(2.2μF)で Vss(GND)とVccとの間に装着しています。(無くても動作します) ハンダ付け時には 0.6mm程度の糸はんだ、フラックス液、フラックス洗浄液、 半田吸い取り線 ルーペ、テスターは必須だと思います。 最初に製作した時(上の画像)は、 端子をはんだメッキにしたので、 端子パターンに薄くはんだ付けが必要でしたが、 均一な半田メッキは難しく、 その後サンハヤトのタンシメッカーを購入してしまいました。 写真右のフレキは端子メッカーでメッキした物です。 #どういう訳か内側の列はきれいに出来たのですが、 端の列は艶のあるメッキにはなりませんでした。 #カッターの刃で、ざらつきだけ取って使いました。 |
4−4.取り付け金具(板金)制作 |
増設メモリを固定する板金はDIYのメッキ金具を手加工でカットして形を整えました。 カットした部分のメッキ処理はありません。 あと、ポケコン本体側の溝に引っ掛ける爪はありませんが1.2mm厚なので、 スポンジを押すには充分な強度のようです。 |
余談ですが・・・、
固定ネジはネジ屋さんに頼むと一箱でないと駄目と言われ、そんなにあっても仕方無いと入手が出来ず、
壊れた一眼レフカメラのレンズから2本ほど有ったので、カメラショップで子供のおもちゃ用の壊れたカメラを
¥100で購入しネジを使おうと思ったらプラスチックネジでした。残念。
でも¥100カメラは38−80mmズームのコンパクトAFでしたが、ストラップが切れている
だけで正常に使えました。
おそらく使わないのに、電池を千円で購入。
その後、やっとDIYで各種長さの1.7mmネジのセットが見つかりました。
4−5.組み立て/ポケコンへの取り付け |
S−RAMのはんだ付けが終了し、取り付け金具にスポンジを接着したら、さらにフレキと組み合わせます。
(S−RAMやフレキにはカバーがありませんので、取り外した時の扱いは注意が必要です。)
本体への装着は、作成したSRAMカード(フレキ)を取り付け金具にてネジ止めし、メッキした端子を
スポンジでポケコン側の端子に押し付けます。
必ず装着前に増設端子をエタノールで(綿棒などでこすって)洗浄してから装着するようにして下さい。
装着後、ポケコンの電源を入れ、ALL RESETを押して、正常にメモリが認識されれば完成です。
本体との接続はスポンジによる圧着だけなのですが、とりあえずポケコン本体を持って、
手のひらをぱたぱたとはたく程度なら中のプログラムに異常はありません。
またスポンジの寿命も不明ですが、劣化し圧力が減ったら、スポンジは交換すればいいかと思っています。
どうせならシリコンゴムなどの方が良かったかも知れません。
VX−4はこの増設RAMを装着すると40KBになりますが、本体内蔵の8KBのS−RAMを
62256タイプに貼り替えて、基板上のジャンパーPAD1をオープン、PAD2をショート
に変更すると内部32KB(FX-870P相当)になり、それにこの増設RAMを付けると64KBになります。
所有しているVX-4の内、3台はこの方法で64KBにしました。
Z−1GRは32KBだったのが、この増設をすると64KBになります。
4−6.増設メモリ作成時の材料 |
今回の増設メモリ作成時に使った部品と材料です。
番号 | 名称/型番等 | 個数 |
1 | アートワークしたポジ原稿 | 1枚 |
2 | カメレオンフレキ1K(100x150) | 1枚(12個取れます) |
3 | 感光剤、エッチング液、容器、ガラス板 | 1式 |
4 | S−RAM(62256LFP) | 1 |
5 | 2.2μFチップ型パスコン(無くても動作します) | 1 |
6 | 本体固定用板金(自作) | 1 |
7 | 固定用ネジ1.7mm | 1 |
8 | 3mm厚スポンジ(DIYで購入) | 1 |
9 | ハンダ用品(コテ、ハンダ等) | 1式 |
4−7.あとがき |
増設メモリ制作についてですが、CASIO製ポケコンでは増設RAMはバッテリバックアップされず、
交換時はプログラムが消えてしまうので外部増設端子にS−RAMをじかに半田付けしても、何の問題も無いと思います。
フレキの画像で端子が判ると思いますので、「フレキの自作はちょっと・・」という方は、
直にS-RAMを半田付けした方が確実かも知れません。
この増設メモリは、以前にオークションに千円で出品したのですが、入札は有りませんでした。
本体が千円前後なのに無謀だったようです。
なら自分で使おうとまたVX−4を入手してしまい、自宅や会社や鞄の中も、実験機や予備機まであります。
実はボタン電池をビニールテープで巻き付ける方式のバッテリバックアップでライトプロテクト
パターンも付けたフレキも描いたのですが、システムが対応してないので意味はありませんでした。
プログラムだけを増設RAM内に出来ればプログラムごとに交換出来るのに残念。
PB−1000の増設メモリ「RP−32」とは、端子が全然違っており、互換はありません。
RP−32は8KBx4枚の構成らしく、/CSが4本あるようです。あんなサイズに4枚も収納出来るのかな?。
アドレス線も32KBは出ているようなので、デコードはダイオードOR
だけでも大丈夫と思いますが片面フレキではジャンパーが必要になりそうな予感です。
当然ですが、自作品を装着するとメーカーの保証はされなくなりますし、
失敗すると大切なポケコンを壊してしまう可能性があります。
改造は自己責任で楽しみましょう。
By 山爺
本記事の内容は、山爺氏が制作したもので、
記事は、山爺氏・あお氏よりご寄稿して頂きました。ご協力誠にありがとうございました。