モンスターパニック(MONSTER PANIC)エポック社/ポケットデジコム・シリーズ/1982年頃
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「電子ゲーム」は1979頃から、子供たちに「エレクトロニクス」という夢を運んで登場しました。 子供達にとって「エレクトロニクス」は「コンピュータ」であり、 当時も今も非常に関心の深かった題材ではなかったでしょうか。 それまでは情報の伝達が提供者からの一方的なものばかりでしたが、 コンピュータの登場によって「双方向性」を持つようになり、 将棋やオセロの相手をしたり、勉強の手助けをしたり・・と 当時はコンピュータの利用価値に「無限に広がる夢」を見ていたのです。 そんなコンピュータを手軽に楽しめる電子ゲーム機は当然の如く子供達を虜にしていったのでした。 メディア(少年雑誌)等の後押しもあってか、メーカ側も切磋琢磨し、 ブームの間は実に沢山のゲーム(機種)が発売されました。 (余談ですが、電子ゲーム全盛期の頃は現在とは違ってゲーム業界の動向や ゲームの詳細な発売スケジュール等の情報が乏しく、具体的な発売日や 全ゲーム総数が不明で、TVゲーム以上の奥深さがあるのです) もちろん、表示制限等の関係でTVゲーム程に幅広くはありませんが、 電子ゲームにも様々なジャンルのゲームがあるのです。 その中で過半数を占めているジャンルが「アクションゲーム」です。 ラッシュ時間に駅員に扮したり、またあるゲームでは銀行強盗に扮したりと、 設定の広がりは逆にテレビゲーム以上だともいえなくもありませんが、 ゲームの傾向として「受動的」と「能動的」に分ける事が出来ます。 「受動的」なゲームの代表例が「バクダンマン(バンダイ)」で、 ひたすら落ちてくる爆弾を受け止めるように移動対象物を中心に ゲームが進行し、プレイヤーが動いて食い止めたり避けたりします。 電子ゲーム初期のゲームに多い傾向です。 |
それに対して「能動的」なゲームは、目的に対して主人公(プレイヤー)が動かないとゲームが進行しないタイプのゲームです。
プレイヤーの行動にはある程度自由が与えられており、時には敵を攻撃したり、また敵からの攻撃を避けたり出来ます。
後期の電子ゲームにこの種のゲームが増えたのは「ゲームの進化」という点で当然とも言えるかもしれません。
しかし、この両タイプのゲーム性を見た場合、その殆どが単一事象に追加要素を付け足した内容になっているのです。
今回紹介するゲームに関連して、典型的な「能動的」な内容の例として、「サーチライト(学研)」を見てみましょう。
まず「サーチライトを避けて囚人を収容所から脱走(左端に移動)させる」、主となる要素があります。
しかし、これだけではゲーム進行としては、いささか「単純」であり、プレイヤーの熱中度はそれほど持続しないでしょう。
このゲームが熱中度という点について優れているのは、「壁を壊す」「ランダムに監視が戻る」という付加要素によって、
収容所に戻る必然性が発生する事にあります。これによってゲームがより一層奥深くなっているのですが、
複雑化してもそれはあくまで「クリスマスツリーに飾りを付ける」ようなもので主目的が変わる事はありません。
(名作「FLフリスキートム」や「LCDソーラーパワー(共にバンダイ)」の2パターン式になっても変わりませんでした)
これは表現力に乏しい電子ゲームでは当然の事で、重ねる事の出来ない表示パターン内では、
基本事象を設定した上で細かい追加要素を付与して、いかに複雑に見せるかが面白くするカギとなっているからです。
そんな実情の中、「モンスターパニック」は登場しました。
ハード本体を手にしても、決して画面が大きい訳ではなく、2画面式でもソーラータイプ(太陽電池)でもない・・。
背景も「タートルブリッジ(任天堂)」等と比べると地味目で、ボタンの数も「パクパクマン(エポック)」と同じ・・・と、
何の変哲もないゲームのように見えました。
しかし、このゲームには、従来の電子ゲームとは違う「電子ゲームの常識を打ち破った何か」が、そこにありました。
はたしてそれは何だったのでしょうか。
本コーナーでは、それを徹底紹介していきたいと思います。
※ゲームに使用するキーは本体中央部に十字に配置されているボタンです。
左右キーが「進路キー」で、上が「ジャンプ(JUMP)キー」、下が「アタック(ATTACK)キー」となっています。
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まずはゲームの舞台を眺めてください。「IN」「OUT」の看板がある事からも 「お化け屋敷」のように見えます(説明書上では「モンスターハウス」)。 プレイヤーは少年を動かして[IN]から[OUT]の場所に誘導する必要がある事は 画面を見ただけでお分かり頂けると思います。 また、ゲーム開始前の段階でモンスターがスタンバイしているので、 これらの攻撃を切り抜けなければならないのも容易に想像できます。 実は、これが従来には無かった方式で、要所要所に設置された関門を それぞれ異なる攻略法で突破し、ゴール(クリア)を目指すものです。 「関門突破方式」と名付けましょう。(笑) この方式は以後の同社の電子ゲームの主流となるのでした。 同社のFL機でも「幻魔タイタン」や、他社でも後期の「アスレチック・ランド(トミー)」が顕著な例です。 (ちなみに、このゲームでは電池を入れてもデモ画面(時計表示)状態では 全くモンスターが動かず、その攻撃はプレイしてみるまで分からないという ちょっとしたスパイスも効いています。わくわくしますね。 ・・・って、メーカがそこまで意図して作ったかは疑問ですが) ゲームの舞台背景については、説明書では「『モンスターハウス』に迷いこんだ少年が、 モンスターの攻撃をかわして脱出するゲームです」と、たったこれだけ! 画面を見てから思いついたような背景説明ですが、 コンピュータゲーム黎明期には複雑なストーリーなど必要とせず、 ひと目見ただけで分かるゲーム性に重点が置かれていました。 ゲームモードにして[ジャンプ]キーを押すと、 いかにもお化け屋敷風な暗いメロディーが鳴って、ゲームスタートします。 |
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迅速に行動を取る事が重要なのです。 といっても得点が重なるにつれ、 大男のクセに異様なスピードになっていきますが。(笑) それにしても、 大胆に足のないデザインをしているフランケンですが、 全く違和感ありませんね。 さすがです。(笑) |
第2の難関は「ドラキュラ」です。 ドラキュラがコウモリから変身して襲ってきます。 ドラキュラに変身した時にこのドラキュラの手前にいると、 血を吸われてしまい、ミスになってしまいますので その場から離れてください。 また、この時にドラキュラの懐に入り込んで [アタックキー]を押すと十字架をかざして ドラキュラに反撃できます! (その場で待ち伏せて撃退する事はできません) |
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運良く(?)ドラキュラを退治出来ると、 ボーナス点(10〜90点)が加算されます。 関門突破型ゲームで忘れてはならないのが 「ドンキーコング(任天堂)」ですが、これは避け要素のみのゲームでした。 モンスターパニックでは攻撃要素を含んでいるところも、 特質すべき点でしょう。 |
続く第3の難関は「半魚人」です。 半魚人が襲いかかった時(池から出た時)に 主人公が手前にいると池に引きずり込まれてしまいミスになります。 [ジャンプ]キーでハシゴ(説明書表記は「はしご」)を登るか、[左進路]キーで後退して避けましょう。 また、上の階ではミイラ男が爆弾をひたすら落としているので、タイミングを見計って上に登るようにしましょう。 半魚人もドラキュラ同様反撃する事が出来ます。 (10〜90点。ほんとこの点数の開きの大きさは謎です・・^^;) 筆者が数多くプレイする限り、 ドラキュラ2回・半魚人2回は確実に倒せますが、その後は運に等しいようです(自己完結 ^^;)。 |
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第3の難関はミイラ男です。 前述した通り、ひたすら爆弾を落としていますので(転がしているというのが正解か)、 [ジャンプ]キーで飛び越えて先へ進んでください。 爆弾を飛び越えても点数は入りませんので、早く切り抜けたいものです。 もちろんジャンプし損ねると爆発してミスとなりますが、 ちゃんと爆弾と共に階段を転げ落ちて壁で爆発する演出ばかりか、 ミイラ男は爆弾を投げると爆弾は手元から無くなるし、 どこからともなくせっせと爆弾を運んで落とす、演出の細かさにお気づきでしょうか。 このゲームの特質すべき点として、細部に渡ってこういった「芸」が仕込まれているのです。 |
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…という事で、爆弾が落ちてこない間に[左進路]キーで階段を掛けあがり、 天井の戸が空いた隙に[ジャンプ]キーで最上階(屋根裏部屋)に行きましょう。 しかし、天井の戸の真下はジャンプできませんので注意してください。 パターンクリアを重ねると、ミイラ男と爆弾の動きがゲーム開始直後に比べ、驚く程高速化するので注意してください。 2階に上がった直後にジャンプしなければやられたり、 連続ジャンプしすぎてジャンプするタイミングを間違えたりするなど 1階の半魚人のところでタイミングを計りながら、 迅速にかつ的確に状況を把握する高等テクニックを必要とします。 点数が入らないからといって、油断しないようにしましょう。 また、ミイラ男は反撃出来ませんが、このゲームでは一番の働き者なので大目に見てあげましょうネ。(^^; |
ミイラ男は連携プレイに要注意!とにかくジャンプして天井が開く瞬間を狙うんだ! |
さて、ようやく最上階の「屋根裏部屋」にたどり着きました。 今まではどちらかと言うと「避け」主体のゲーム内容でしたが、 なんとここでは剣を取り、ガイコツ男とフェンシングで一騎打ち! テレビアニメで主人公が敵の美青年将軍(例:ガルーダ・プリンスハイネル・リヒテル・・あれ?) と決闘するシーンがありますが、電子ゲーム上でそのシーンが蘇るのです! まず屋根裏部屋に行ったら、 部屋の左端に剣が置いてあるので[左進路]キーを押して剣を取ります。 剣を取ったら、ガイコツ男に向かいます。そしてガイコツ男と戦闘開始!! ガイコツ男の手前まで来たら[アタック]キーで剣を出しましょう! 4回剣を当てるとガイコツ男は後ろにさがります。 |
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そして出口の近く、これ以上ガイコツ男が後ろにさがれない状態でさらに4回当てると、 ガイコツ男はバラバラになり1パターンクリアとなります。 しかし、一筋縄ではいきません。ガイコツ男も負けじと剣を繰り出してきます。 ガイコツ男の剣を受けてもミスにはなりませんが、 少年が後ろに1歩さがってしまいます。 (もちろん剣を取ってない状態で突っ込んでも、 ガイコツ男の剣を受けるだけですのでやめましょう。^^;) じわじわ追い詰められ、屋根裏部屋入り口(戸の上)でガイコツ男の剣を受けると、 戸が空いて2階に降りてしまいます。 そしてそのままミイラ男の爆弾の餌食になってしまうケースが 多いので注意しましょう。 屋根裏部屋の戸の真下はジャンプ出来ないので、 [右進路]キーでジャンプ出来るところまで戻って、 爆弾を避けながら再び屋根裏部屋を目指しましょう。 このガイコツはなかなか手強い敵です。 序盤でのガイコツは動きが控えめで剣を出すタイミングが読めるのですが、 パターンクリアを重ねて1000点を超えたあたりから、 いきなり(?)積極的に屋根裏部屋入口まで少年を追い詰めるようになるではありませんか! (一言でいうと移動した瞬間に剣を出すといった「体当たり」戦法です^^;) 今までの電子ゲームは得点がアップしてもゲーム速度が高速化するだけなので、 反射神経だけでパターンを切り抜けられただけに、 このアルゴリズムの変化には驚かされます。 これだけ凝った内容の電子ゲームが今まであったでしょうか。 私の操る「少年」は、強化したガイコツの前と 高速で爆弾を落としまくっているミイラ男のコンビネーションにバッタバッタと倒れていきました。(^^; ちなみに剣を取る位置は「安全地帯」ですが、 この位置に留まっているとガイコツがじわじわ迫ってきて、 最後に剣を投げてミスとなってしまいます(これも「永久パターン防止策」です)。 普通に闘うとミスになる事はないのに、わざわざ不利になるような事をする必要はありませんので、 これは「遊びプレイ」で確認する程度にしましょう。 |
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それは少年がミスした時のガイコツの「動き」です。 なんとダンス(前後に動く)して喜んでいるではありませんか!(笑) このガイコツ、相当お調子モノですね(^^;) また、当時の電子ゲームでは単純なブザー音のファンファーレが多かったのに対し、 モンスターパニックの奏でる「おばけ屋敷チックなコミカルなメロディ」は 間違いなく子供達を虜にするのに一役買っていたのでした。 |
筆者個人の意見では、同年に発売された電子ゲームの売上では 「ドンキーコング」に大きく水を上げられてしまいましたが、 ゲームとして単純な面白さを考えた場合、必ずしも「ドンキーコング」が勝っているとは思いません。 現在でも十分に楽しめる「モンスターパニック」。 是非これを手に入れて電子ゲームの面白さを堪能してください。 「ゲーム&ウォッチ」ばかりが注目される今日この頃、本ゲームを無視すると一生後悔しますよ〜。 |
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エポックの「ポケットデジコム」に関しては「パクパクマン」をご覧ください。 「デジコム」シリーズはLED,FL方式を採用した大きめなポータブル筐体で、 「ポケットデジコム」はその弟分、LCD方式を採用し、携帯性を意識しています。 「ポケットデジコム」シリーズは、 画面やボタンが拡大化したデラックス版「同・スーパーワイド」や、 さらに小型化した「同・ミニ」に派性しています。 このゲームはゲームに使用するボタンが4方向に並んでいます。 「パクパクマン」の筐体を再利用とも考えられますが、ボタンの役割が違うので ボタンに矢印の表示(エンボス)はありません。 また、ボタン配置もゲーム内容にマッチしていて、不快感を感じる事もありません。 「パクパクマン」と違い、画面周辺に曜日の表示がありません。 「もしかして曜日機能が削除されているのでは?」と疑問を持たれた方、ご安心ください。 |
ちゃんとスタート位置上部に曜日を表示するパターンがあるんです!
これだけゲームパターンを配置してるのに、よく曜日まで表示する領域を確保出来たと感心せざるを得ません。
ちなみに時刻表示の少年は10秒間で一周します(一歩0.5秒経過)。
黄色い本体がとても良く似合う本ゲーム。
いつでもどこでもプレイしたいゲームだからこそ、出来れば「サウンドオフ」を付けて貰いたかったと最近頻繁にプレイして思います。
まぁ当時はそんなの関係無くプレイしたんでしょうけど・・。
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「モンスターパニック」ではモンスターが沢山出てきます。 しかし何か足りない・・・。そう「狼男」がいないのです! これでは「怪物くん」に申し訳ない・・と思ったらいました。(笑) なんとアラームキャラクターとして登場するのです。 「アラーム音」の表記は、説明書ではあくまで「狼男がほえる」の徹底ぶり。(笑) こういう部分でも開発者のこだわりが見え隠れしますね〜。 また本ゲームは「ポケットデジコム・スーパーワイド」で 「フクちゃん、おばけなんかこわくない」というタイトルでリメイク されています。モンスターパニックは「西洋の怪物」ですが、 これは「日本のおばけ」です・・なんだかな〜という感じがしますが 本作は歴史的名作なのでリメイクも許せる気がしますね。(笑) ちなみにパッケージはコミカルタッチになっています。 超怖いホラータッチじゃ、子供達は寄り付きませんですからね。 これは子供達を惹き付けるのに、当然の対策(?)といえるでしょう。 |
参考文献:
モンスターパニック「取扱い説明書」(エポック社)